【なぜ?】病院や薬局で「お薬が足りない」と言われる理由。現役薬剤師がニュースの裏側をやさしく解説

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こんにちは!中年薬剤師です

最近、病院や薬局でお薬をもらうときに、こんなことを言われた経験はありませんか?

「いつもと違うメーカーのお薬になりますが、成分は同じです」 「今、このお薬が全国的に不足していて、半分しかお渡しできません…」

実は今、日本の医療現場では前代未聞の「お薬不足」が数年も続いています。咳止めや熱下げ、抗生物質から、普段の持病のお薬まで、ありとあらゆる薬が手に入りにくくなっているんです。

「日本なのにどうしてそんなことが起きるの?」 「何か大きな陰謀でもあるんじゃないの?」

そう思ってしまうのも無理はありません。しかし、この問題の裏には、「ジェネリックの不祥事」「お薬の値段の仕組み」「複雑な流通」という、日本の医療が抱える3つの深いワケがあります。

今回は、ニュースでは少し分かりにくい「お薬が消えた本当の理由」を、現場の薬剤師の視点からできるだけ分かりやすく解説します!

🚨 理由①:ジェネリック医薬品メーカーの不祥事(危機の引き金)

この大不足が始まった最初のきっかけは、数年前に起きた「後発品(ジェネリック)メーカーの不祥事」です。

いくつかの大手の製薬会社が、国で決められたルールを守らずにお薬を作っていたことが発覚し、国から「業務停止命令」を受けました。

これにより、そのメーカーの工場がストップし、膨大な量のお薬が出荷できなくなってしまったのです。

負の連鎖(ドミノ倒し)が発生

一つのメーカーが作れなくなると、患者様はお薬がもらえなくて困ってしまいます。そのため、「別のメーカーの同じお薬」に注文が殺到しました。 しかし、他のメーカーも急に何倍もの量を増産することなんてできません。結果として、ドミノ倒しのように全てのメーカーでそのお薬がパンクしてしまったのです。


📉 理由②:薬の値段が下がり続ける「薬価制度」の壁

「じゃあ、新しい工場を作ってどんどん増産すればいいじゃない」と思いますよね。それができない最大の理由が、日本の「薬価(薬の公定価格)制度」にあります。

日本では、お薬の値段は国によって厳格に決められています。そして、このお薬の値段は「原則として毎年、引き下げられる」仕組みになっているのです。

特にジェネリック医薬品は、もともと価格が安く設定されている上に、毎年どんどん値下がりします。メーカーからすると、以下のような苦しい状況に追い込まれてしまうのです。

  • 作れば作るほど赤字になる薬がある
  • 原材料費や電気代、人件費が上がっているのに、薬の販売価格は勝手に下げられる
  • 薄利多売すぎて、新しい工場を建てるお金(設備投資)が残らない

つまり、製薬会社にとって「薬を作っても儲からない(むしろ損をする)」という構造になってしまっているため、企業が体力を失い、トラブルが起きたときに持ちこたえることができなくなってしまったのです。

🛍️ スーパーの食品は値上げできても、お薬は値上げできない?

現在、中東問題などの国際情勢の影響でガソリン代(物流コスト)が跳ね上がり、原材料費や電気代など、ありとあらゆるモノの値段が上がっていますよね。

例えばスーパーに並ぶ食品や日用品であれば、原材料が上がれば、各メーカーは「自社のタイミング」で商品価格を値上げして、コストを価格に転嫁することができます(もちろん、各企業とも値上げをしないよう凄まじい企業努力をされていますが、背に腹は変えられない時は値上げに踏み切ります)。

しかし、お薬(医療用医薬品)は全く違います。

お薬の値段は国が決定する「公定価格」なので、製薬会社が「来月から電気代が上がったので、1錠あたり2円値上げします!」などと自社の都合で自由に値上げすることは絶対にできません。

基本的には「通常1年間(次の薬価改定まで)は、どんなに世界情勢が変わっても値段はそのまま据え置き」になります。

つまり、食品メーカーなら数ヶ月で価格に反映できるコストの急増分を、製薬会社は次の改定が来るまで、何ヶ月もすべて「自社の持ち出し(100%製薬会社負担)」で耐え続けなければならないのです。ただでさえ薄利多売のジェネリックメーカーが、これによってどれほど致命的なダメージを受けているか、想像に難くありません。

💡 国もついに動き出した!不採算品目を守る「救済ルール」

「作れば作るほど赤字になるなら、もう作るのをやめるしかない……」 そんなメーカーの限界を放置すれば、日本の医療そのものが崩壊してしまいます。

そこで国もついに危機感を強め、近年では「これ以上お薬の値段を下げない、むしろ引き上げる」という異例の救済措置(薬価の引き上げ対策)を本格化させています。

具体的には、以下のような仕組みが強化・導入されています。

  • 不採算品目再算定: 原材料費の高騰などでどうしても赤字になってしまうお薬について、メーカーからの申請をもとに、国が「特例」としてお薬の値段を引き上げる(元に戻す)制度です。近年の薬不足を受けて、対象となる品目の数が大幅に増やされています。
  • 安定供給評価の導入: ただ安いだけでなく、「きちんとお薬を安定して作り続けられる体制があるか」「トラブルが起きたときの説明責任を果たしているか」といった企業の姿勢を点数化し、評価の高いメーカーのお薬の値段を優遇する(下がりにくくする)新しい仕組みも始まっています。

つまり国もようやく、これまでの「とにかく薬を安くする」という方針から、「多少コストがかかっても、国民の命を守るために薬を安定して届ける」という方針へ、大きな舵を切り始めているのです。

🌸 中年薬剤師からのお願い:お薬の未来を「応援」で支えてほしい

国がこの救済ルールでお薬の値段を引き上げると、皆様が病院や薬局の窓口で支払う金額(3割負担など)も、数十円〜数百円ほど少しだけ高くなる場合があります。

物価高が続く中で「お薬代まで上がるの?」と思われるのは当然のことだと思います。

ですが、もしこのままお薬の価格が下がり続け、メーカーが限界を迎えて「お薬そのものがこの世から消えてしまう」ことになったら……それこそ、お金を出しても命を守るお薬が手に入らない、本当に恐ろしい事態になってしまいます。

窓口でのほんの少しの負担増は、「日本の医療を守り、ご自身や大切なご家族がこれからもずっと安心してお薬を受け取るための、未来への投資」でもあるのです。

毎日、必死にお薬を作り続けている製薬会社や、調剤室でお薬を確保しようと奮闘している私たち現場の医療スタッフを、ぜひ温かい「応援する気持ち」で一緒に支えていただけると、これほど心強いことはありません。


🚚 理由③:欲しい薬が届かない「流通問題」と「出荷調整」

お薬が足りなくなると、今度は薬局や卸売業者(問屋)の間で「お薬の奪い合い」が始まってしまいます。

これを防ぐために、製薬会社は「出荷調整(制限)」という措置をとっています。「過去にこれだけ買ってくれた実績がある薬局にだけ、決まった数だけ等分に配ります」というルールです。

これによって何が起きるかというと……

  • 新規の患者様が多い薬局には薬が届かない
  • 卸売業者も「どこにどのお薬をどれだけ配ればいいか」のコントロールでパニックになる

結果として、市場のあちこちでお薬の流通が完全に目詰まりを起こしてしまい、「あっちの薬局にはあるのに、こっちの薬局には在庫が1個もない」という偏りが生まれてしまっているのです。


💡 私たち患者はどうすればいいの?

この問題は、国の制度や製薬業界の構造が根っこにあるため、残念ながら明日明後日にすぐ解決するものではありません。

今、私たちにできる最大の対策は、「かかりつけの薬局をひとつに決めておくこと」です。

バラバラの薬局にお薬を取りにいくよりも、いつもあなたのデータを管理してくれている「かかりつけ薬局」に相談するほうが、薬剤師も在庫を優先的に確保しやすくなったり、どうしても薬がない場合に「同じ効果のある別の薬」を医師に提案して変えてもらうといった対応がスムーズにできます。

「もし、『今飲んでいる自分の薬は大丈夫かな?』『メーカーが変わって不安…』という個別の疑問があれば、私のココナラで個別相談を受け付けています。周りに聞きにくいことでも、現役の視点から優しくお答えしますのでお気軽にどうぞ!」


  • 「かかりつけ薬局を決めて、複数のお薬をしっかり管理するために、ひとつにまとめられる便利なお薬手帳ケースや、飲み忘れを防ぐカレンダー型ケースを持っておくと便利ですよ」

結びの文章

毎日、調剤室でお薬の棚を見つめながら、「今日もあの薬が入ってこない…」と頭を悩ませている薬剤師は全国にたくさんいます。私たちも、患者様にお薬をしっかり届けたくて必死に在庫を探しています。

もし、薬局で「いつもとお薬のメーカーが変わります」と言われても、有効成分や効果は全く同じですので、どうか安心して使ってくださいね。

一刻も早く、誰もがお薬を当たり前に受け取れる平穏な毎日に戻ることを切に願っています。

以上、中年薬剤師でした!


■ 主な情報元・参考文献

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